手軽にバストアップできるプチ豊胸の中で、新しくできたアクアフィリング豊胸(アクアリフト豊胸)。触感や持続期間が従来のヒアルロン酸豊胸に勝ることから注目が高まっています。しかし、新しい施術で症例数が少ないことや、安全性を保証するアメリカのFDA認可を得ていないことなどから私自身も安全性を危惧していました。(過去の記事でご紹介しています。)そして最近、当院でもアクアフィリング豊胸の失敗が何件か確認されています。
今回は、なぜアクアフィリング豊胸がそれほどまでに人気があるのか、安全性に関してはどこまで証明されているのか、そして当院で実際に確認された失敗事例をご紹介します。
アクアフィリング豊胸の特徴
アクアフィリング豊胸の人気の秘密として、多くの美容外科クリニックでうたわれている特徴と安全性についてまとめました。
自然な仕上がり
アクアフィリング豊胸は仕上がりが柔らかく、バストの動きや揺れが自然と言われています。これは体内組織とのなじみが良いことが理由としてあげられます。アクアフィリングの成分はほとんどが水分。副作用や拒絶反応を起こすことはあまりなく、シリコンバッグやヒアルロン酸のように厚い皮膜ができにくいとされています。そのため、注入後にバストが硬くなるといったトラブルが少ないようです。
持続期間は3〜5年
アクアフィリングは98%の水分、2%はポリアミドでできています。注入後、水とポリアミド間の水素結合が徐々に分解され、その後少量づつ体内に吸収されます。これまでのヒアルロン酸が半年〜1年ほど効果が持続するのに対し、アクアフィリングは3~5年。プチ豊胸の中でも効果が長持ちすることが特徴のひとつです。
ダウンタイムが少ない
アクアフィリング豊胸は切開する必要がなく、注入だけの豊胸術でダウンタイムが少ないことも特徴です。
痛み……筋肉痛程度の痛みが1週間ほどありますが、痛み止めで対応できる程度です。
内出血…..注入針が血管を損傷することは殆どないため、内出血は殆どありません。
腫れ…..異物が体内に入るため、反応が出ます。個人差があります。1週間以内に落ち着いてきます。
シリコンバッグ豊胸と同等(2カップ程度)のバストアップが可能
これまでのヒアルロン酸豊胸と比べて多く注入することができ、2カップ程度のバストアップが可能と言われています。アクアフィリングはヒアルロン酸よりも柔らかいため、多く注入してもバストが硬くなりにくいことなどが理由としてあげられています。
生理食塩水で溶ける
これまでのアクアフィリングは生理食塩水で溶けることもメリットのひとつとして上げられています。そのため、注入後に除去を希望される場合でも、すぐに溶かすことができると言われています。
注入部位によってバストのデザインが可能
アクアフィリング豊胸は、形が決まっているシリコンバッグ豊胸と違い、注入する位置によってご希望のバストの形を叶えることができます。左右差の改善や谷間をデザインするなど、ご希望に応じた細かなアレンジが可能である点も喜ばれているようです。
アクアフィリング豊胸の安全性
水で溶ける成分
アクアフィリングは、薬剤ではなく生理食塩水で溶けることから、安全なイメージが強いようです。
ゆっくりと吸収&排泄
アクアフィリングは注入後に、水とポリアミドの間の結合が3~5年かけて徐々に分解。ゆっくりと吸収されていきます。その後ポリアミドは体内の免疫細胞によって処理され、最終的には尿として排出されると言われています。
欧州の品質安全「CEマーク」を取得
アクアフィリングは、2009年にヨーロッパの厚生労働省の認可適合「CEマーク」の許可を得ています。その中の、妊娠・授乳への安全確認のための「ISO10993-3基準」に合わせた審査をクリアしていることから、妊娠・授乳の安全性もうたわれています。
しかし、アメリカの同等機関FDAの許可が得られていないことから、安全性を危惧するドクターも少なくないようです。
アクアフィリング豊胸しこりの症例
アクアフィルング豊胸にはメリットと思われる点も多数あることからも施術を希望される方が増加しています。しかし一方では、アクアフィリング豊胸によるトラブルも確認されているのです。THE CLINICでも、他院で受けたアクアフィリング豊胸後のご相談を多数いただいています。その一部の症例をご紹介しましょう。(横浜院 千葉先生ブログより)
アクアフィリング豊胸トラブル例1 変形としこりから除去を希望
こちらの方は半年前に他院でアクアフィリング豊胸を行った後、しこりとバストの変形に悩み除去手術を希望して来院されました。術前の診察では、両胸に不自然な盛り上がりとしこりがあることが分かりました。エコー診断では、アクアフィリングによる多数のしこりを確認。
エコーを見ながら生理食塩水を注入し、溶解・吸引して除去しました。アクアフィリングは生理食塩水で溶解されると言われていますが、実際には一部が溶けずに固まった状態でした。
アクアフィリング豊胸トラブル例2 硬さと安全性が気になり除去を希望
次の方は他院でアクアフィリング豊胸後、わずか1か月で除去手術を希望して来院。理由は、バストの硬さと安全面の不安からとのことでした。
アクアフィリングを生理食塩水で溶解して除去します。一見溶けているように見えるアクアフィリングですが、完全にはとけていないようです。
アクアフィリング豊胸トラブル例3 生理食塩水で溶けないしこり
こちらは、コンデンスリッチ豊胸を行う前に、除去したアクアフィリング豊胸のしこりを除去したケースです。エコーではかなり厚い皮膜が形成されているのが確認できました。厚い皮膜ができないはずのアクアフィリングでしたが、必ずしもそうではないようです。
アクアフィリングを除去するために、エコーを見ながらセオリー通り生理食塩水での溶解を試みました。なかなか溶けず、ヒアルロニターゼも追加して、最終的にはなんとか溶解除去することができました。
生理食塩水で溶けるはずのアクアフィリング、溶け残ったのはなぜ?
生理食塩水で溶けると言われていたアクアフィリングですが、実際の美容外科クリニックの現場では、ご紹介した症例のように溶け残りが確認されています。
溶けずに残る原因としては①アクアフィリングに極僅か数パーセント含まれるポリアミドによるものが考えられます。アクアフィリングの中のポリアミドの濃度は薄いので発がんの可能性は殆どないと思われますが何とも判断できません。(尚、FDAでは発がんの可能性があるためアクアフィリングは認可が下りていません。)
②アクアフィリングに対して異物と判断し組織が反応し攻撃します。それによって産生された物質の可能性です。
このように完全には溶けていないのが現状です。また生理食塩水を混ぜた時の柔らかさや不純物の少なさは、注入してからの期間に相関していると思います。体の中にとどまっている期間が長ければ長いほど溶けにくく不純物が多いと感じます。
まとめ
アクアフィリング豊胸はまだ新しい豊胸術であるため、このようなトラブルのリスクがあることを知らない女性も多いのではないでしょうか。アクアフィリング豊胸(アクアリフト豊胸)に限らず、プチ豊胸におけるしこりのリスクをなくす方法は現在ありません。今回ここでご紹介したのは、このようなリスクがあることを知った上で、豊胸手術の方法を決めていただきたかったからです。
当院のカウンセリングでもリスクをお伝えしたうえで施術を行っています。また、ご本人のご希望や体型によってもベストな豊胸術は異なります。豊胸手術にお悩みの方は、お気軽に無料カウンセリングにお越しください。
こちらのコラムでは、代表的な豊胸手術(シリコンバッグ、ヒアルロン酸、アクアフィリング、脂肪注入)で実際に起こったトラブルについて解説しています。
▷豊胸手術の失敗15例を実際の画像で解説します
これから豊胸手術をご検討中の方も、失敗修正でお悩みの方もぜひご覧ください。